その声かけは、子供のやる気につながりますか?

学生

こんにちは。スクールIE原田校で講師をしている篠崎です。

今回は、お父様、お母様からの声掛けについてお話をさせていただきたいと思います。

日々家事やお仕事で忙しくされていらっしゃる中で、お子さんが全然勉強していないのを見てしまったら、きっと心の中にモヤモヤが溜まってしまうと思います。

このままで将来大丈夫かな、学校の宿題はできてるのかな、どうやったら勉強してくれるのかな……

そう思って「いつまでもゲームしてないで、勉強しなさい。あなたはやれば出来るんだから」と言ってはみるものの、全然やってくれない……

こういった悩みをお持ちの方は大勢いらっしゃると思います。

もしかしたらその悩みは“声掛けのやり方”次第で変わるかもしれません。

そのことを、実際にいらっしゃった一人の生徒さんを例にお話したいと思います。

 

成績が振るわない理由

 

成績を上げて欲しい、提出物をちゃんと出せるようになって欲しい、ということで入塾された中学2年生の生徒さんで、私は数学を担当していました。

何度か授業をしてみて、 一番印象に残ったのは“自己評価の低さ”です。

「どうせわからないです」「僕は頑張れない人間なんで」「クラスで一番頭悪いですよ」

といった調子で、何をするにしても「自分にできるわけがない(と思っている)」から諦めているような状況でした。

雑談や授業中のやりとりなどで“彼の素質”と“実際の成績”とにギャップがあるな、と感じていたのですが、その理由はこれだと思いました。

中学生くらいだと、自分の能力・行動・結果などに正当な評価を下すことのできるお子さんの方が少ないです。

きっとこれらの言葉も周囲の人から言われたことをそのままオウム返しにして、それを自己評価にしてしまっていたのでしょう。
そんな状況では、子供本来の“やる気”が出るはずもありません。

とにかく、彼を変えるにはまずこの自己評価をなんとかしなければ、と思ったのです。

 

自己評価を上げるために

 

彼の自己評価を変えるために行ったのは“承認と否定を使い分けて声かけすること”です。

 

何を承認するのか。彼がしたこと全てを、ひとつひとつ承認します。

何を否定するのか。彼が自分を低く評価した時だけは、否定します。

 

提出物を出せたとき。持って来てね、と伝えたものを持ってきてくれたとき。学校の友人関係の話をしてくれたとき。

ひとつひとつ、「提出できたね。」「ちゃんと持ってこれたね。」「そんな言葉をかけてあげられるんだね。」と彼の行動を承認していきます。

もともと、いろんなことに対して「できるわけがない」と思っていた子ですので、まずは“今、できること”に目を向けさせてあげる必要がありました。

 

提出物を出せなかったとき。持って来てね、と伝えたものを持ってきてくれなかったとき。

そのときもまずは、「今回はできなかったんだね」「忘れてしまったんだね」と承認します。

そのうえで、「どうやったらできるかな」「どうやったら忘れずに持ってこれるかな」と、解決策を一緒に考えていきました。

最終的に、提出物に関しては“できるだけ家でやって、間に合わくなったら塾の自習スペースでやる”、持ってくるものは“毎週、塾から電話してもらって確認する”という計画を立てることができました。

 

否定するのは、彼が自分を悪く言ったときだけです。

ここで注意しなければいけないのは、決して“彼自身を否定しないこと”です。

たとえ本人が

「僕頭悪いんで」

なんて言葉を口にしたとしても、

「違う」「そんなことない」

という対応では、“そう思っている彼自身を否定する”ことになってしまうのです。

そうではなく、

 

「今、学校のテストの点数は確かに低いね。ただ先生は、点数が上がる素質を○○君に感じてるよ。ゲームの話のときのあの速い返しは、そういう素質の表れだと思うよ」

 

といったように、まず承認し、“講師は”そう思っていない、ということを伝えて、さらにその根拠になることを、それまでやってきた“承認”の中から選んで付け加えるようにしました。

 

イメージとしては、彼の自己評価の基盤になっている“周囲からの評価”、その中に新しく“ポジティヴな評価”を増やしていく感じでしょうか。

 

厄介なことに、否定的な評価というものは“宿題しない”“忘れ物をする”という強固な事実とともに行われます。

それを突き崩すためには“ポジティヴな評価”の方にも同じくらいの根拠を与える必要があります。

根拠のない「やればできる」を信じられなくなった時に、子供はやる気をなくしてしまうのです。

 

その根拠を作り上げるためにも、普段からの承認が必要になってくるのです。

 

 

その結果……

ひとつの結果が得るまでに半年以上かかりましたが、

数学の点数は、それまで30点~40点台だったのが、2年の学年末テストで70点に。

内申点は、1だったのが3をもらえるようになりました。

彼がずっと努力を続けてくれたこと、それが実を結んだこと、そして、それを学校の先生も認めてくれたことがとても嬉しくて、思わず涙が出そうになりました。

その時の彼の照れくさそうな、誇らしそうな表情は、きっと忘れられないでしょう。

これからも、浮き沈みがあるかもしれません。でも、“やればできる”というだけではなく“やったから、できた”という成功体験が、彼にとって大きな糧になると信じています。

 

紆余曲折

もちろん、その半年の間にはいろんなことがありました。

一番印象に残っているのは、3ヶ月くらいたった頃でしょうか、学校ワーク(提出物)が進んでいるかどうか確認のお電話をした時です。

期限までに1日何ページやればいいか計算して計画を立てていたのですが、

 

「計画どおり進んでるかな?」

 

と聞いたところ、

 

「どうせ出来てないと思ってるんでしょ」

 

と返ってきたのです。

これは、「どうせ(先生もほかの人と同じように)進んでないと思ってるんでしょ」、ということなのです。

周囲からの評価が自己評価につながっていることの、紛れもない証拠だと思いました。

正直に言って面食らいましたが、気を取り直して

 

「進んでたら嬉しいな、と思ってるよ」

 

と伝えたところ、一瞬言葉に詰まって、そのあとは「出来てません」と正直に話してくれました。

正直に話してくれたことで、「声掛けの効果が出始めているのかな」と思うと同時に、彼の自己評価を変えることの難しさを実感した経験でもありました。

 

最後に

この生徒さんは、

“できなかったこと”だけ承認されて“できたこと”は承認されず、根拠のないまま「やればできる」と言われる。

そんな経験を経て非常に低い自己評価を身につけてしまっていたのだと思います。

 

自己評価が低いままでは、次のことにチャレンジするやる気は出ません。

そしてその自己評価の基礎は、周囲からの評価がほとんどです。

 

保護者の皆さんはぜひ、声掛けをする時に「この子は今、自分のことをどう思っているのかな」とご自分に問いかけてみてください。

それはつまり「次のことにチャレンジできる心の状態になっているかな」ということでもあります。

 

そして、いざという時の「やればできる」をお子さんに信じてもらうためにも、普段からお子さんのできたこと、できなかったことをひとつひとつ承認してあげてください。

そうやって信頼関係を築くことができれば、1回の声掛けのもつ効果も、自然と大きくなってくるはずです。